有効求人倍率とは何?種類や計算方法をわかりやすく解説!
転職活動をする上で、「売り手市場」や「買い手市場」という言葉を聞いたことがあると思います。
ちなみに近年は売り手市場と言われており、仕事を探している人(求職者)にとって有利な状況です。
このような転職市場の状況を示すのが、いわゆる有効求人倍率と呼ばれるもので、ハローワークのデータを元に統計が取られています。
有効求人倍率の意味や計算方法を理解して、転職市場についての知識を深めましょう。
有効求人倍率とは一人あたり何件の求人があるのかを示す数値
雇用動向を示す数値として、有効求人倍率が参考になります。
有効求人倍率は「1倍」を中間値として、1未満は企業側に有利な「買い手市場」、1以上は求職者に有利な「売り手市場」を意味します。
企業が10人の求人を募集する中、5人の求職者しかいないときは、有効求人倍率が2倍になります。
その結果、求職者は仕事が選びやすくなり、企業側は人手不足の状況に陥るのです。
一方で、企業が5人の求人を募集していて求職者が10人もいれば、有効求人倍率は0.5倍になり1を大きく下回ります。
すると企業側は、多くの求職者から厳選された人材を採用できるようになり、求職者にとっては不利な状況に一転するワケです。
有効求人倍率は厚生労働省が算出している!
有効求人倍率を発表しているのは厚生労働省で、ハローワークに申し込まれた求人や求職のデータを取りまとめて指標を作成しています。
この統計を参考にすることで、企業側は採用活動における人材の動向が把握できたり、求職者は就職の難しさを判断できたりといったメリットがあります。
有効求人倍率とあわせて理解しておきたい用語
有効求人倍率を深く知る上で、以下の4つの用語に関しても知識を深めておきましょう。
有効求人数
前月から繰り越された求人数と、当月に申し込まれた新規求人数を合計した値です。
有効求職者数
前月から繰り越された求職者数と、当月に申し込まれた新規求職者を合計した値です。
季節調整値
季節的な要因によって起こってしまう、市場の変動を取り除いた値が「季節調整値」です。
季節的という例をあげると、暑い夏は清涼飲料水が売れたり、ボーナス時期には消費が増えたり、大型連休は工場の稼働が減って生産が下がったりといった要因です。
またお盆やお正月の習慣も季節変動に値します。
前年の同じ月と比較するなら、このような季節的な要因を把握する必要はありません。
しかし前月と比較する場合には、季節変動によるものなのか、景気変動によるものなのかが分からない状況になってしまいます。
季節変動を除去した季節調整値を知ることで、正確な市場が明らかになるのです。
完全失業率
完全失業率とは、15歳以上の労働力人口に対し、仕事に就けない求職者(完全失業者)の割合を指します。
総務省が毎月「労働力調査」として発表しており、私たちが雇用情勢を知るためのひとつの手段です。
対象となるのは15歳以上ですが、学生や専業主婦、高齢者は「非労働力人口」に該当するため人数に含まれません。
つまり労働力人口とは、非労働力人口を除いた、「従業者」と「休業者」と「完全失業者」で構成されていることになります。
最新の有効求人倍率はどのくらい?
2010年からの有効求人倍率は以下の通りです。
西暦 | 有効求人倍率 |
---|---|
2010年 | 0.52倍 |
2011年 | 0.65倍 |
2012年 | 0.80倍 |
2013年 | 0.93倍 |
2014年 | 1.09倍 |
2015年 | 1.20倍 |
2016年 | 1.36倍 |
2017年 | 1.50倍 |
2018年 | 1.61倍 |
2019年 | 1.60倍 |
2020年 | 1.18倍 |
2009年に数値が大幅に落ち込んでしまったのは、リーマンショックが原因です。
しかし翌年から緩やかに上昇し、2014年には1倍を上回る結果に。
さらに2019年は1.6倍となったことから、近年は「売り手市場」が継続していました。
しかしコロナによる求人数の減少で、2020年は前年から0.42ポイントも下回り、1.18倍となっています。
参考:厚生労働省「一般職業紹介状況」
有効求人倍率は「有効求人数÷有効求職者数」で算出できる
簡単な例をあげると、企業が100人の求人をしているのに対し、求職者が50人とするなら、
「100人÷50人=2.0倍」となり、「売り手市場」という状況です。
企業が100人の求人をしているのに対し、求職者が200名とするなら、「100人÷200人=0.5倍」となり、「買い手市場」という訳です。
買い手市場になると1人の枠に複数の求職者が申し込むので、企業側は採用の基準を上げることができ、求職者は内定が簡単にもらえない状況になります。
転職活動をするなら、売り手市場の時期に仕事を探すのが一番いい方法です。
有効求人倍率をチェックする際の注意点
有効求人倍率は、転職活動をする上で貴重な情報源になりますが、データを鵜呑みにしてはいけないケースもあります。
ハローワーク以外の求人は含まれない
有効求人倍率はあくまでもハローワークのみを対象としています。
そのため、転職サイトや求人情報誌に掲載されている求人数や求職者数はデータに含まれません。
ハローワークを利用しない企業や求職者もいるので、正確な市場が反映されていないことを理解しておきましょう。
また有効求人数には、学校を卒業して就職する「新卒者」に対する求人数や求職者の人数も含まれていません。
正社員の求人とは限らない
有効求人倍率のもう一つの注意点は、正社員を募集している求人とは限らないことです。
データでは正規社員と非正規社員の求人の区別がされておらず、契約社員や派遣社員を希望する人も含まれています。
厚生労働省のサイトには「含パート」と「除パート」のデータも掲載されていますが、こちらも契約・派遣社員が含まれたものです。
非正規社員の採用は一時的な募集であることが多いので、求人数が増えている錯覚に陥ってしまいます。
要するに、有効求人倍率が正確だとは言い切れないということです。
有効求人倍率を理解して効率よく就活をしよう!
有効求人倍率は、世の中の景気動向を示す指標として活用できるツールです。
また有効求人倍率を知ることで、「今が転職に最適な時期か」「志望する業界や企業に採用される確率」などを予測することができます。
しかしハローワークのみのデータであることや、非正規社員も含まれていることから、正確な数値であるかには疑問が残ります。
しかしデータを理解せずに転職活動をするよりは、効率的な就活ができることに間違いはありません。
景気や転職市場を知るためのツールとして有効求人倍率を活用し、効率的な就活を行いましょう。